「S&P500もオルカンも上がってきた。いまから積み立てを続けて、本当に大丈夫なのか」

投資を始めた直後より、少し知識が増えたころの方が不安になることがあります。株価の最高値、PER、米国金利、インフレ、AI相場。ニュースを読めるようになるほど、悪材料も目に入るからです。

そこで今回は、今後1年を当てにいくのではなく、過去データから「どのくらいの値動きなら起きても不思議ではないか」を整理します。

先に結論
過去98年では米国株のマイナス年は26回、約27%ありました。一方で「最高値に近いから、その後1年が特別に悪い」という強い傾向も確認できません。
次の1年は十分に下がり得る。でも「高値だから積立を止める」という判断を、過去データだけで正当化するのも難しい。 これが今回の出発点です。

まず知っておきたい。「長期投資」でも1年はかなり荒れる

Aswath Damodaranがまとめた1928〜2025年の米国株データでは、S&P500(配当込み)の年間リターンは平均+11.85%、中央値+15.22%でした。

しかし、平均だけを見ると大事なことを見落とします。98年のうち26年はマイナスでした。最悪の年は1931年の−43.84%、最良の年は1954年の+52.56%です。

S&P500の年間リターンは、かなり広く散らばる1928〜2025年・配当込み。98年のカレンダー年リターンを8区分に集計 BEIYOMI DATA データ出典:Aswath Damodaran, Data Update 2026 · 単位:年 beiyomi 0 5 10 15 20 21 -20%未満 -10〜0% 10〜20% 30〜40% S&P500の年間リターンは、かなり広く散らばる 1928〜2025年・配当込み。98年のカレンダー年リターンを8区分に集計
S&P500の年間リターンは、かなり広く散らばる。 データ出典:Aswath Damodaran, Data Update 2026

このグラフで重要なのは、「平均11.85%」の周辺に毎年きれいに収まっているわけではないことです。−20%を下回る年も6回、+30%を超える年も18回ありました。

つまり、インデックス投資が長期では比較的安定した考え方でも、1年間だけ切り取れば、かなり広い範囲を覚悟する必要があるということです。

※ここで使うのは1928〜2025年の「各カレンダー年」のデータで、任意の日から始めたすべての12か月リターンではありません。今後1年の確率予測そのものではなく、1年程度の値動きの大きさをつかむために使っています。 Damodaran historical returns

「いま高値だから危ない」は、本当か

不安の中心はここかもしれません。S&P500は2026年8月に最高値を更新し、9月22日時点でも最高値のすぐ下にありました。高値を見ると「今から買うと天井づかみになるのでは」と感じます。 Reuters

Nick Maggiulliは、1950〜2025年のS&P500について、最高値から5%以内にいる日と、それ以外の日を分けて、その後のリターンを比較しています。

高値圏だから、1年後が特別に悪いとは言いにくい1950〜2025年のS&P500。最高値から5%以内か、それ以外かで、その後1年平均を比較 BEIYOMI DATA データ出典:Nick Maggiulli, Of Dollars And Data · 単位:% beiyomi 0% 3% 6% 9% 10.1% 最高値から5%以内 最高値から5%超 8.3% 10.1% 高値圏だから、1年後が特別に悪いとは言いにくい 1950〜2025年のS&P500。最高値から5%以内か、それ以外かで、その後1年平均を比較
高値圏だから、1年後が特別に悪いとは言いにくい。 データ出典:Nick Maggiulli, Of Dollars And Data

その後1年の平均は、高値圏で+8.3%、高値圏ではないときで+10.1%。高値圏の方が少し低いものの、1年後の分布はかなり似ています。

さらに3年間では逆に、高値圏から始めた場合の年率平均が8.4%、それ以外が7.8%でした。期間を変えると方向まで逆になります。

ここから言えるのは、「最高値に近い」という情報だけで売買タイミングを決める力は弱いということです。高値は暴落の予告ではありません。ただし、高値だから安全という意味でもありません。 Of Dollars And Data

では、2026年9月の「今」はどう見る?

現在は、単純に「株価が高い」だけの相場ではありません。9月25日までの市場には、相反する材料が同時にあります。

いまのS&P500を動かす4つの材料

強気材料と弱気材料が同時に存在する

材料現在地1年先への意味
株価最高値圏高値だけでは下落を予測できない
長期金利米10年債利回りは2007年以来の高水準株価評価には逆風になりやすい
企業利益AI関連を中心に利益期待が株価を支える利益成長が金利の逆風を相殺しうる
バリュエーションS&P500の予想PERは2023年以来の低水準「指数が最高値=評価倍率も最高」とは限らない
2026年9月25日時点の市場環境。 出典:Reuters

この組み合わせでは、1つの数字だけを見て「来年は上がる」「暴落する」と決めるのは危険です。金利が高止まりすれば株価には逆風ですが、企業利益が予想以上に伸びれば、その逆風を打ち返すことがあります。

いま感じている不安を、4つに分けて考える

「株価が高いから売る」の1本線ではなく、別々の材料を分解して見る

このまま積立を続けて大丈夫?株価が高値圏金利が高い企業利益が伸びるか1年の値動きは大きくブレる長期の積立計画とは分けて考える 高すぎない?逆風では?利益は続く?高値だけでは決まらない評価を圧迫しうる逆風を相殺しうる短期予測の限界

今後1年を数字で「予言」するより、3つのケースを持っておく

過去データから、2027年9月のS&P500を一点で予測することはできません。代わりに、現在の材料がどう組み合わさるかを3つに分ける方が実用的です。

今後1年のシナリオ地図

数値目標ではなく「何が起きたら、どちらへ動きやすいか」を見る

ケース起きること株式への方向
弱いケースインフレが粘る → 金利高止まり → 利益予想も鈍化下落・調整が大きくなりやすい
中間ケース金利は高いが、企業利益が伸びる高い金利と利益成長が綱引き
強いケースインフレ鈍化 → 金利低下 + 利益成長維持株価には追い風が重なりやすい

重要なのは、どのケースにも十分な可能性があることです。1928〜2025年の単純なベースレートでは、プラス年が72回、マイナス年が26回でした。ただし、「だから今後1年も73%の確率で上がる」という意味ではありません。 現在の条件を無視して過去の頻度をそのまま未来の確率に置き換えることはできないからです。

オルカンを積み立てている人にも関係する

「自分はS&P500ではなくオルカンだから関係ない」とは言い切れません。MSCI ACWIでは、2026年4月末時点で米国株が65.54%を占めていました。米国株の動きは、世界株インデックスにも大きく効きます。 MSCI ACWI factsheet

一方で、残りは日本、台湾、中国、欧州、カナダなどです。S&P500より地域分散が効くため、この記事のS&P500データをオルカンの将来リターンへそのまま当てはめることもできません。

積立投資家にとって、本当に確認すべきこと

今後1年が不安なとき、相場予想より先に確認したいのは、「1年の下落で、自分の計画が壊れる設計になっていないか」です。

過去には米国株が1年で−20%を下回った年もありました。そうした値動きが起きたときに生活資金まで必要になる、あるいは怖くなって全部売りたくなるのであれば、問題は「来年のS&P500を当てられるか」より、リスクの取り方にあります。

逆に、投資期間が十分に長く、生活防衛資金と投資資金が分かれていて、下落時にも積立計画を維持できるのであれば、1年予測の重要度は相対的に下がります。

結論:今後1年は「上がるか」より「何が起きても驚かない地図」を持つ

過去98年を見ると、米国株はプラスの年の方が多くありました。しかし、4年に1回程度はマイナス年で、大きな下落も何度も経験しています。

一方、最高値圏にいること自体は、その後1年の明確な売りシグナルではありません。現在は高い金利という逆風と、企業利益という追い風がぶつかっています。

だから、今回のデータから導けるのは「2027年9月にS&P500は○%になる」という答えではありません。

次の1年に下落しても、それだけで長期投資の前提が壊れたとは言えない。上昇しても、高値だから安心とも言えない。

インデックス投資をしている人にとって、過去データの一番役立つ使い方は、未来を当てることより、自分が耐えられる範囲と、短期のニュースで変えてはいけない前提を切り分けることなのだと思います。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の売買を勧めるものではありません。過去の実績は将来のリターンを保証しません。データ期間・定義が異なる統計を単純比較しないよう、本文中でそれぞれの期間と条件を明記しています。