米国の住宅ローン金利が、再び家計にとってかなり重い水準まで上がっています。
Mortgage News Daily(MND)の日次指数では、9月24日の30年固定住宅ローン金利が7.45%。前日の7.26%から、1日で0.19ポイント上昇しました。
7.45%という数字だけでは、負担の大きさは少し分かりにくいかもしれません。
そこで、金利の効果だけを見るために、借入額を1億円として30年間の返済額を計算してみます。住宅ローンの返済計算は通貨が変わっても同じなので、これは米国の金利水準を日本円の感覚でつかむための試算です。
1億円を7.45%で30年借りると、利息だけで1.5億円
年7.45%、30年固定、元利均等返済、360回払いでは、毎月の返済は69万5,794円、30年間の総返済は2億5,048万5,820円です。
つまり、1億円を借りて、30年間そのまま返し続けると約2.5億円を支払う計算です。
元本は1億円なのに、利息だけで約1.5億円。総返済額の約6割が利息になります。
もちろん、実際の住宅ローンでは途中で住宅を売却したり、金利が下がれば借り換えたり、最初にポイントを払って金利を下げたりすることがあります。すべての借り手が30年間この総額を支払うという意味ではありません。
それでも、7%台の長期金利が購入可能額をどれほど圧迫するかは、この試算からよく分かります。
「米国の住宅ローン金利は7.45%」とだけ言うと少し不正確
9月24日時点では、代表的な住宅ローン指標でも数字が異なっています。
MNDは日々の変化を追う指数で、9月24日の急な金利上昇をすぐ反映しています。一方、Freddie Macは週次平均です。
したがって今回の速報で正確な言い方は、「MNDの日次30年固定指数が7.45%に上昇した」です。
去年の6.37%でも高かった。それでも差は大きい
MNDの同じ日次指数は、1年前の同時期には6.37%でした。
1億円・30年固定という同じ条件で比べると、6.37%なら毎月の返済は約62.35万円。7.45%では約69.58万円です。
差は毎月約7.23万円。30年間そのまま返済した場合の総額では、約2,601万円の差になります。
住宅価格が1円も上がらなくても、金利だけでこれだけ購入コストが変わります。
もっと大きいのは、3%台で借りた人との格差
米国の住宅市場には、さらに大きなねじれがあります。
Realtor.comがFHFAのNational Mortgage Databaseを基にまとめた2026年1〜3月期のデータでは、既存住宅ローンの49.9%が4%以下、77.9%が6%未満の金利を抱えています。
つまり、多くの既存住宅所有者は、現在の7%台よりかなり低い金利をすでに確保しています。
3%で1億円を30年借りる試算なら、毎月返済は約42.16万円、総返済は約1.52億円。7.45%では毎月約69.58万円、総返済約2.50億円です。
同じ1億円を借りても、金利差だけで総返済額は約9,871万円増えます。
高金利なのに、住宅価格が単純に暴落するとは限らない
高い住宅ローン金利は、買い手だけではなく売り手にも効きます。この二方向の作用を見ると、現在の米国住宅市場の動きが理解しやすくなります。
高金利は買い手と売り手の両方を止める
需要だけでなく供給も細るため、価格より先に売買件数が落ちやすい
高い住宅ローン金利は、まず買い手を苦しくします。同じ月々の予算なら、借りられる金額が減るからです。
しかし、もう一方で売り手も動きにくくなります。3〜4%の住宅ローンを持っている人が家を売り、別の家を7%台で買い直せば、同じような住宅でも毎月の返済が大きく増える可能性があります。
そのため、「今の低金利ローンを手放したくない」というロックインが起きます。
結果として、高金利 → 買い手が減るだけではなく、高金利 → 売り手も減る → 中古住宅の供給も減るという力が同時に働きます。
このため、金利が上がれば住宅価格がそのまま大幅下落する、という単純な関係にはなりません。価格より先に、売買件数が細ることがあります。
7.45%が示しているのは、住宅だけの問題ではない
住宅ローン金利は、Fedの政策金利だけで決まりません。
長期国債利回り、住宅ローン担保証券(MBS)の利回り、金融市場のリスクプレミアム、貸し手のコストなどが重なって決まります。
MNDは今回の上昇について、原油高、強い経済指標、今後のFed利上げペースへの警戒などを背景として挙げています。
つまり7.45%は、住宅市場だけのニュースではなく、米国全体の金融環境が再び引き締まっていることが、家計の長期借入コストにまで伝わっているという数字でもあります。
これから見るべき3つの数字
まず見るべきは、米10年国債利回りです。長期金利が高止まりすれば、住宅ローン金利にも下がりにくい圧力が残ります。
次は、インフレとFedの政策見通しです。インフレが落ち着かず追加利上げ観測が強まれば、債券市場を通じて住宅ローン金利にも影響します。
そして住宅市場では、価格だけでなく住宅ローン申請件数と中古住宅の売買件数を見る必要があります。
高金利が長く続くほど、まず表れやすいのは「家が急落すること」ではなく、買いたい人も売りたい人も動きにくくなることだからです。
1億円が2.5億円になる数字は、誇張ではない
年7.45%・30年固定・元利均等という条件なら、1億円の借入に対して総返済額が約2.5億円になる計算は正しいです。
ただし、これは30年間金利が変わらず、借り換えも繰上返済もせず、税・保険・手数料なども別にした場合の純粋なローン計算です。
本当に重要なのは「1億円が2.5億円になる」という驚きだけではありません。
住宅価格が変わらなくても、金利の上昇だけで家の実質的な購入コストは大きく変わる。
そして米国では、低金利時代に借りた既存所有者と、いま新しく借りる買い手の間に大きな金利格差が残っています。
7.45%という数字は、そのねじれをさらに強くする水準です。
出典:Mortgage News Daily(2026年9月24日)、Freddie Mac Primary Mortgage Market Survey、Realtor.com Economic Research / FHFA National Mortgage Database。返済額は年利を12分割した月利を用いた元利均等返済の試算です。本記事は公開情報を基にした市場分析であり、特定の金融商品・住宅購入を推奨するものではありません。