9月25日の米国市場は、少し不思議な動きをしました。
米10年国債利回りは日中に5.2297%まで上昇し、2007年以来の高水準をつけました。それでも終値では、S&P500が0.51%高、Nasdaqが0.48%高、Dowが0.93%高でした。 Reuters
「金利が上がれば株は下がる」と考えると、矛盾して見えます。
しかし今回の相場は、金利の逆風が消えたのではなく、AIを中心とする利益期待がその逆風を一時的に上回ったと考えると整理しやすくなります。
この記事のポイント
- 米10年金利は9月9日の4.83%から25日の5.17%へ上昇し、日中には5.2297%をつけた。
- それでも9月25日はMicrosoftなどAI関連株が上昇し、主要株価指数もプラスで終えた。
- これは「高金利が株に効かなくなった」という意味ではない。金利上昇による評価額の下押しと、企業利益への期待上昇が同時に起きている。
- 今後は、長期金利がさらに上がるかだけでなく、AI投資が本当に利益予想の上方修正へつながるかを見る必要がある。
まず、金利の逆風はむしろ強くなっている
米財務省の10年国債CMTを見ると、9月9日の4.83%から9月25日の5.17%まで、約0.34ポイント上昇しました。
25日の日中には、Reutersによると10年債利回りが5.2297%まで上昇しました。これは2007年以来の高水準です。30年債も一時5.5319%まで上がり、債券市場の値動きの大きさを示すMOVE指数は週間で約30%上昇しました。 Reuters
つまり、株価が上がったからといって「金利上昇の問題が解決した」わけではありません。
それでも株が上がった最大の理由は、利益期待が強かったから
9月25日は、AI関連企業に個別の好材料が重なりました。
MicrosoftはCopilotの刷新を発表し、株価は3.7%上昇。Qualcommは4.0%、Dellは5.0%上昇しました。AkamaiもAnthropicとの大型契約を受けて3.2%上昇しました。一方でMetaは3.3%下落しており、「AIなら何でも上がる」という相場ではありません。 Reuters
重要なのは、AI関連企業の上昇率がS&P500やNasdaqの上昇率を大きく上回っていることです。
Reutersは、最近の米企業の利益予想上昇のかなりの部分をAI関連の大型企業が担っていると報じています。さらに、8月の米製造業受注ではAI関連設備投資が資本財需要を押し上げたことも確認されています。
投資家が見ているのは「AIという言葉」ではなく、設備投資が売上や利益へつながる可能性です。
「金利上昇=株安」にならなかった仕組み
株価をとても単純化すると、将来得られる利益を「今はいくらの価値があるか」に換算したもの、と考えられます。
金利が上がると、将来の利益を現在価値へ戻すときの割引率も上がりやすくなります。同じ利益なら、理論上の評価額は下がりやすくなります。これが高金利の逆風です。
一方で、将来の利益そのものが予想以上に増えると見込まれれば、金利上昇によるマイナスを打ち返すことがあります。
株価に同時に働いた「逆風」と「追い風」
1つの材料だけでは9月25日の相場を説明できない
| 力 | 9月25日の材料 | 株式への意味 |
|---|---|---|
| 金利の逆風 | 米10年債は日中5.2297%まで上昇 | 将来利益の現在価値を下げやすい |
| Fedの逆風 | 10月利上げの市場織り込みは66%程度 | 高金利が長引く懸念 |
| AIの追い風 | Microsoft +3.7%、Dell +5.0% | 利益成長への期待が金利の逆風を一部相殺 |
| 原油の小休止 | 原油は25日に約3%下落 | インフレ懸念を少し和らげた |
| 市場の広がり | S&P500の7/11業種が上昇 | AIだけの一点上昇ではなかった |
9月25日は、まさにこの二つがぶつかった日でした。
金利は株価評価を下げる方向、AI関連の利益期待は株価評価を上げる方向。 その日の終値では後者が勝ちました。
ただし、AI株だけの上昇だったわけでもない
ここも重要です。S&P500の11業種のうち7業種が上昇し、値上がり銘柄数は値下がり銘柄数の約1.7倍でした。情報技術は1.06%高、資本財・産業株は0.85%高でした。 Reuters
したがって、「Microsoftだけが指数を押し上げた」と説明するのも不正確です。
AI関連株が強い中心材料だった一方で、原油価格が25日に約3%下落してインフレ懸念が少し和らいだことや、週末を前に債券利回りが日中高値から下がったことも、株式市場には支えになりました。 Reuters
安心材料ばかりではない
株価指数が上昇しても、市場の内部には弱さが残っています。
Nasdaqでは9月25日、52週の新高値が44銘柄だった一方、新安値は147銘柄ありました。S&P500でも新高値3銘柄に対して新安値31銘柄でした。 Reuters
これは、その日の値上がり銘柄数が多かったことと矛盾しません。「今日上がったか」と「過去1年の安値圏にいるか」は別の指標だからです。
さらに、10月のFed会合で少なくとも0.25ポイント利上げされる確率は、9月25日時点で市場が66%程度まで織り込んでいました。これは市場価格から読んだ織り込みで、客観的な実現確率そのものではありません。高金利がさらに長引くシナリオへの警戒は、むしろ強まっています。 Reuters
今後は「金利」と「利益予想」をセットで見る
今回の相場から得られる一番大事な示唆は、株価を長期金利だけで説明しないことだと思います。
見るべきなのは、少なくとも二つです。
一つ目は、米10年国債利回りです。5.2%台を超えてさらに上昇するのか、それともいったん落ち着くのか。金利が上がり続ければ、特に将来利益への期待が大きい成長株ほど評価額への圧力が強まりやすくなります。
二つ目は、AI関連企業の利益予想です。設備投資や大型契約が続くだけでは十分ではありません。それが売上、利益率、キャッシュフローの改善として確認されるかが重要です。
金利の逆風が強くても利益予想がさらに上がれば株価は耐えられます。逆に、利益予想が止まった状態で金利だけが上がれば、今より厳しい組み合わせになります。
結論:金利が効かなくなったのではなく、別の力が上回った
9月25日の米国市場は、「金利上昇=必ずその日に株安」という単純な関係ではないことを示しました。
米10年債利回りは2007年以来の高水準まで上がりました。それでも、AI関連企業の利益期待、個別の好材料、原油の反落、市場全体の値上がりの広がりが重なり、主要指数は上昇しました。
ただし、高金利という逆風は残ったままです。
これからの焦点は、5%を超えた長期金利の圧力を、企業利益の上方修正がどこまで打ち返せるか。 この二つを同時に見ると、今の米国株をかなり理解しやすくなります。
データ確認:米国債利回りはU.S. Department of the Treasury、株価・市場反応・利上げ織り込みはReutersの2026年9月25日報道を使用。米財務省CMTは日々のパーイールドカーブから算出される指標で、Reuters記載の日中高値とは時点・算出方法が異なります。