9月16日、FRB(米連邦準備制度理事会)は政策金利を0.25%引き上げ、3.75〜4.00%にしました。しかも、FOMC(米連邦公開市場委員会。FRBの政策金利を決める会合)参加者が示した2026年末の政策金利見通しの中央値は4.1%でした。現在のレンジの中心は3.875%なので、単純化すると「年内にもう1回、0.25%の利上げ」が参加者の中心的な見方だと読めます。これは約束ではなく、各参加者が現時点で適切と考える金利経路です。

普通に考えると、これは株には逆風です。ところが翌17日の米国市場では、S&P500が1.14%、NASDAQが1.69%上昇しました。

なぜでしょうか。

この記事のポイント

  • 株高は「FRBが利上げをやめる」と市場が考え直したからではありません。
  • むしろ、原油価格と米10年国債利回りが下がり、同時に雇用はまだ崩れていないことが安心材料になりました。
  • つまり今の市場は「利上げそのもの」よりも、「インフレを押し上げる原油」と「株の評価を圧迫する長期金利」がどこまで上がるかを強く見ています。
  • ただし、これは金融緩和への転換ではなく、引き締め局面の中での一時的な安心と考えるのが自然です。

FRBの引き締め姿勢はむしろ強まりました

今回のFOMCでFRBは、政策金利を3.75〜4.00%へ引き上げました。さらに9月の経済見通しでは、2026年の実質GDP成長率を2.3%、失業率を4.1%、PCEインフレ率を3.7%と見込んでいます。PCEインフレ率とは、個人消費支出の価格変化をみる物価指標で、FRBが2%目標の基準として重視している指標です。

ここで重要なのは、FRBが「景気は弱いから利上げする」のではなく、「景気と雇用がまだ耐えられるので、インフレを抑えるために追加の引き締めができる」と見ている点です。

実際、17日に発表された新規失業保険申請件数は19.6万件で、前週の20.6万件から減少しました。単週の数字は祝日などで振れやすいものの、4週移動平均も20万3,250件へ低下しています。失業保険を新たに申請する人が増えていないため、少なくとも現時点では大規模な解雇が広がっているとは言いにくい状況です。

それでも株が上がった理由は、長期金利が下がったから

政策金利と株価の関係を見るとき、FRBの金利だけを見ても十分ではありません。

株式、とくにNASDAQのような成長株に強く効くのは、10年国債利回りのような長期金利です。将来の利益を現在の価値に割り引くときの基準となる金利が高くなるほど、遠い将来の利益の現在価値は小さくなります。これが「金利上昇で成長株の評価倍率が下がりやすい」理由です。

米財務省のデータでは、10年国債利回りは9月16日の5.01%から17日には4.94%へ低下しました。わずか1日ですが、「5%をさらに大きく超えて上昇し続ける」という不安がいったん後退しました。

米10年国債利回りの推移
米10年国債利回りの推移。9月17日は前日の5.01%から4.94%へ低下。 出典:Federal Reserve Board via FRED

その結果、FRBの政策金利は上がっても、株価を直接圧迫していた長期金利の上昇が少し和らぎました。これがNASDAQの反発を説明する重要な部分です。

もう1つの安心材料は原油です

今回のインフレ懸念の出発点には、中東情勢を背景にした原油高があります。

原油価格が上がると、ガソリン代だけでなく、輸送費や物流費、企業の原材料コストにも影響します。それが広い範囲へ波及すると、FRBは「一時的なエネルギー高」ではなく「インフレが再び広がっている」と判断しやすくなります。

ところが原油は3日連続で下落し、18日アジア時間のBrent原油は1バレル104ドル前後まで下がりました。Brent原油は国際的な原油価格の代表的な指標です。まだ100ドルを超えているので安心できる水準ではありませんが、サウジアラビアの供給障害がさらに悪化するという最悪シナリオはいったん後退しています。

つまり17日の株高は、「FRBが利上げに慎重になった」からではなく、「FRBに追加の引き締めを迫る材料が少し弱まった」と考えると理解しやすいです。

市場は追加利上げをまだ見ています

ここを誤解しないことが重要です。

金利先物市場では、10月FOMCでさらに0.25%利上げする確率が17日時点で約53%まで上昇しています。金利先物とは、市場参加者が将来の政策金利をどの程度予想しているかを価格から読み取る市場です。さらに年末までに少なくとも1回追加利上げする確率は約90%と報じられています。

「株が上がった=利上げ懸念が消えた」ではありません。

市場は追加利上げをかなり織り込んだうえで、原油と長期金利が少し落ち着いたことを評価しています。言い換えると、昨日の反発は金融緩和への期待ではなく、引き締めがさらに急激になるリスクの後退です。

今後の3つのシナリオ

ここから1〜3カ月を考えると、私は次の3つに分けて見ています。これは現在のデータから組み立てたシナリオで、確定的な予測ではありません。

① 45%:原油と長期金利が落ち着き、景気は維持
Brent原油が100ドル方向へ徐々に下がり、10年金利も5%前後で頭打ちになれば、FRBが追加利上げしても株式市場は耐えやすくなります。特に長期金利低下の恩恵を受けやすい大型テクノロジー株には支えになります。

② 35%:原油が再上昇し、長期金利も再び5%超へ
中東の供給障害が悪化し、原油が再び大きく上がれば、インフレ懸念が強まり、FRBの追加利上げ観測も強まります。長期金利まで上がると、企業利益へのコスト圧力と株価評価倍率の低下が同時に起こりやすくなります。

③ 20%:雇用・景気が急に弱くなる
失業保険申請や消費、企業活動が急速に悪化すれば、FRBはインフレ抑制と景気悪化の間で難しい判断を迫られます。利上げ停止が株高につながるとは限りません。景気後退が理由なら、企業利益の下方修正が株価を押し下げるからです。

次に見るデータ

日本時間9月18日14時58分時点では、同日発表予定の米鉱工業生産はまだ公表前です。結果を先取りせず、次の確認材料として扱います。

  • 米鉱工業生産:製造業の強さが続いているか。
  • 原油の実際の供給量:サウジのパイプライン復旧が価格低下につながるか。
  • 米10年国債利回り:5%を再び明確に上回るか、それとも落ち着くか。
  • 10月FOMCの利上げ織り込み:53%前後からさらに上がるか下がるか。

結論

今回の米株上昇を見て、「FRBの利上げはもう怖くない」と考えるのは早いと思います。

FRB自身はむしろ追加利上げを示唆しています。それでも株が上がったのは、原油と長期金利という2つの大きな圧力が同時に少し弱まり、しかも雇用がまだ崩れていないからです。

今後の焦点は、政策金利が1回上がるかどうかだけではありません。

原油高 → インフレ → FRBの追加利上げ → 長期金利上昇 → 株の評価倍率低下

この連鎖が再び強くなるのか、それとも途中で切れるのか。ここを見る方が、今の米国株を考えるうえでは重要だと思います。

参考資料

※本記事は特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。