先週まで、アメリカ市場の大きなテーマは、
「9月のFOMCでFRBは利上げするのか」
でした。
ところが週末を挟んで、少し状況が変わっています。
Goldman Sachsは、それまでの「据え置き」予想を変更して、9月の0.25%利上げを予想するようになりました。
J.P. Morganはさらに一歩進んで、9月だけでなく12月にも0.25%の利上げを予想しています。
市場が織り込む9月利上げの確率も約87%まで上昇しました。 (Reuters)
つまり、かなりの投資家にとって、
「利上げするかどうか」
は、もう最大の問題ではなくなりつつあります。
これから重要なのは、
「今回の利上げが1回だけで終わるのか、それとも新しい利上げサイクルが始まるのか」
です。
物価を見ると、たしかにFRBは動きやすくなった
8月のアメリカCPIは前月比0.4%、前年比3.4%まで上昇しました。
ただし中身を見ると、ガソリン価格が1か月で3.9%上昇し、CPI上昇分の3分の1以上を占めています。 (Bureau of Labor Statistics)
つまり、
「アメリカ経済全体で突然インフレが再燃した」
と単純に考えるのはまだ早いです。
一方、生産者物価PPIも前月比0.4%、前年比5.4%まで上昇しました。
ここでも興味深いのは内訳です。
モノの価格は1.1%上昇しましたが、サービス価格は0.1%しか上昇していません。 (Bureau of Labor Statistics)
ここから見えるのは、
エネルギーやモノを中心とした供給側のインフレ圧力はかなり強くなっている一方、経済全体へ完全に広がったとはまだ言い切れない
という状態です。
これは重要な違いです。
FRBが利上げしても原油は安くならない
もちろんFRBが政策金利を0.25%上げても、中東情勢が改善するわけではありません。
原油を増産することもできません。
それでもFRBが利上げする意味はあります。
FRBが恐れているのは、原油高そのものより、
原油高
→ ガソリン・輸送費上昇
→ 商品価格上昇
→ 賃上げ要求
→ サービス価格上昇
という形で、一時的な供給ショックが持続的なインフレに変わることです。
だから、インフレが経済全体へ広がる前に金利を上げる。
今の市場は、この可能性をかなり織り込み始めています。
しかも、今の雇用はFRBに利上げする余裕を与えている
ここでもう一つ重要なのが雇用です。
8月の非農業部門雇用者数は16.2万人増加し、失業率は4.1%で変わりませんでした。
平均時給も前年比3.1%上昇しています。 (Bureau of Labor Statistics)
つまり、少なくとも今のところ、
「利上げするとすぐ景気後退になる」
というほど労働市場は弱くありません。
これはFRBにとって重要です。
インフレが上がっている。
しかし失業率はまだ低い。
それなら、
景気を守るために利上げを我慢する必要性はそれほど高くない。
むしろ今のうちにインフレ期待を抑えておく方が安全だと考えることができます。
本当に気になるのは10年債金利
ここまでは前回までの記事ともある程度つながっています。
しかし今回は、もう一段重要な変化があります。
米国10年債利回りが5%近くまで上昇しています。
2年債利回りも4.6%前後です。
さらに市場では、来年後半までに合計で約0.9%分の金融引き締めまで織り込み始めています。 (Reuters)
これはかなり大きな変化です。
0.25%の利上げを1回するだけなら、企業や株式市場への影響は限定的かもしれません。
しかし、
3.75%
↓ではなく
4.0%

4.25%

さらに高い金利が長く続く
という世界になれば、話は変わります。
住宅ローン、企業融資、社債、株式のバリュエーション。
ほぼすべての資産価格に影響します。
特に、将来の利益を期待して高い価格がついている成長株ほど、高金利の影響を受けやすくなります。
ただし、私はまだ「長い利上げサイクル」が確定したとは考えていない
ここは重要です。
今の物価上昇には、依然として原油・ガソリンの影響がかなりあります。
PPIでもモノは強く上昇していますが、サービス価格はそれほど上がっていません。
だから現時点では、
9月の利上げはかなり現実的になった。
しかし、
12月、その先まで利上げを続けなければならないほど基調的インフレが再加速したかは、まだ確認できていない。
これが私の現在の見方です。
市場はかなり先まで金融引き締めを織り込み始めています。
むしろ今後面白いのは、
「市場の方がFRBより先走っているのではないか」
という点です。
今週のFOMCで一番見るべき数字
9月15〜16日のFOMCでは、金利そのもの以上に注目したいものがあります。
ドットチャートです。
今回のFOMCでは経済見通し(SEP)も更新されます。 (連邦準備制度)
もし0.25%利上げしても、
「追加利上げはそれほど必要ない」
という見通しなら、現在の債券市場は少し先走っている可能性があります。
逆に、
2026年末や2027年の政策金利見通しそのものが上方修正されるなら、
これは単発の利上げではありません。
金融政策のシナリオそのものが変わった
と考えた方がよいでしょう。

今まで私は、原油高によるインフレ再燃を警戒してきました。
先週は、
「再燃している証拠は増えた。しかし全面的なインフレ再燃までは確認できない」
という段階でした。
今は一つ先へ進んでいます。
市場はすでに、
「9月に利上げするか」
ではなく、
「何回利上げするのか」
を考え始めました。
ただ、データはまだ市場ほど先へ進んでいないように見えます。
だから今回のFOMCで最も重要なのは0.25%という数字ではありません。
FRB自身が『これは1回だけではない』と考えているのか。
そこを確認したいと思います。
もしFRBまで市場と同じ方向へ動き始めているなら、2026年後半の投資環境はこれまで考えていたものとは少し違ったものになるはずです。