住宅ローン7.17%は、住宅市場だけの問題ではない
アメリカの住宅ローン金利が、またかなり高いところまで上がってきました。
9月14日、Mortgage News Dailyが集計する30年固定住宅ローン金利は**7.17%**まで上昇しました。
2025年1月以来の高水準です。 (モーゲージニュースデイリー)
7%を超えた。
これだけを見ると、
「住宅が売れなくなりそうだ」
というニュースに見えます。
しかし今のアメリカ経済を考えると、私はもう少し広い意味を持つ数字だと思っています。
重要なのは、
FRBが本格的に利上げを再開する前から、市場の金利上昇によって金融引き締めが進んでいる
ことです。
住宅ローン金利を押し上げているのはFRBだけではない
アメリカの30年住宅ローン金利は、FRBの政策金利と完全に同じ動きをするわけではありません。
かなり重要なのが、米10年国債利回りです。
その10年国債利回りが現在、5%を突破しています。
9月15日には一時5.004%と、2007年以来の高水準になりました。 (Reuters)
つまり、
原油高
↓
インフレ懸念
↓
FRB利上げ観測
↓
長期金利上昇
↓
住宅ローン金利上昇
という経路が動いています。
市場では今週のFOMCで25bpの利上げが行われる確率を90%以上織り込んでいます。 (Reuters)
しかし住宅市場にとって厄介なのは、FRBの利上げを待つまでもなく借入コストが上昇していることです。
そして住宅市場は、すでに弱い
ここが今回もっとも気になるところです。
8月の中古住宅販売は年率換算398万戸。
前月比2.0%減少し、14か月ぶりの低水準になりました。
一方で売り出し在庫は162万戸まで増え、在庫月数も4.9か月まで上昇しています。 (全米不動産協会)
つまり、
「家がないから売れない」
だけでは説明しにくくなっています。
在庫は増えている。
それでも販売は落ちている。
需要側に問題がある可能性が高いです。
新築住宅も同じ方向です。
7月の新築一戸建て販売は年率60.7万戸で、前月比10.5%減少しました。
販売在庫は9.6か月分あります。 (Census.gov)
さらにMortgage Bankers Associationによれば、9月4日までの週の住宅ローン申請件数も前週比2.7%減少しています。 (MBA)
そして、その後に住宅ローン金利が7.17%まで上がりました。
つまり最新の金利上昇の影響は、これらの住宅統計にはまだ十分入っていません。
ここからが重要になる
住宅は、単独で存在する産業ではありません。
住宅が売れると、住宅ローン、不動産仲介、建設、家具、家電、リフォームなど、いろいろなところにお金が動きます。
反対に住宅取引が止まると、この流れも弱くなります。
そのため私は、
「7.17%になったこと」そのものより、「7%前後の住宅ローン金利が何か月続くか」
を見たいと思っています。
短期間で6%台に戻るなら、それほど大きな問題ではありません。
しかし7%前後が秋から冬まで続けば、住宅市場の弱さが景気全体へ伝わる可能性が高くなります。
ただ、まだ景気後退と決めつける段階ではない
ここは注意が必要です。
8月の雇用統計では非農業部門雇用者数が16.2万人増え、失業率は4.1%でした。
少なくとも現在の雇用統計からは、アメリカ経済が急速な景気後退に入ったとは言いにくいです。 (Bureau of Labor Statistics)
インフレも同じです。
8月CPIは前年比3.4%でしたが、コアCPIは2.4%。
月次CPI上昇の3分の1以上をガソリンが占めています。 (Bureau of Labor Statistics)
つまり、
「景気はまだそれほど弱くない」
一方で、
「エネルギー高でインフレが再び上向き、長期金利が上がっている」
という状態です。
FRBにとってかなり難しい組み合わせになっています。
今回、私の見方が少し変わった
ここ数日は、
原油高 → インフレ → FRB利上げ
を中心に見ていました。
今回の住宅ローン7.17%で、もう一つ確認する必要が出てきました。
それが、
長期金利上昇 → 住宅ローン → 住宅需要 → 実体経済
という経路です。
つまり問題は「FRBが何回利上げするか」だけではなくなっています。
債券市場自身が金融環境を引き締め始めています。
これは少し警戒した方がいい変化だと思います。
今後6か月のシナリオ
現時点では、私は次のように見ています。
55%:高金利が続くが、アメリカ経済は景気後退を回避する
住宅市場は低迷するものの、雇用と消費がある程度持ちこたえるケースです。今のところこれをメインシナリオにします。
25%:インフレ・原油価格が落ち着き、長期金利も低下する
FRBのインフレ抑制への信頼が回復し、10年債利回りと住宅ローン金利が低下するケースです。住宅市場には一番良いシナリオです。
20%:7%台の住宅ローン金利が長期化し、住宅の弱さが景気全体へ波及する
住宅販売だけでなく、住宅着工、建設雇用、耐久財消費などまで悪化するケースです。
今回の7.17%を受けて、私はこの3つ目のシナリオを以前より少し警戒しています。
ただし、まだ「住宅ローン7.17%=景気後退」と判断する材料ではありません。
次に重要なのは、9月17日の住宅着工、9月24日の新築住宅販売、そして今後数週間の住宅ローン申請件数です。米国勢調査局の公表予定でも、この2つが次の重要な住宅統計になります。 (Census.gov)
もし金利が7%前後に留まったまま、住宅着工と販売もさらに落ちるなら、
今回のニュースは単なる住宅ニュースではなく、
「高金利が実体経済を本格的に冷やし始めたサイン」
として見る必要が出てきます。
私はそこを次に確認したいと思います。
住宅ローン金利7.17%。なぜ「住宅だけの問題」ではないのか?
30年住宅ローン金利7.17%が、住宅市場だけでなく消費・企業活動・景気全体へどう波及するかを考えます。
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身で行ってください。