米国の10年国債利回りが、とうとう5%を超えました。
この数字はかなり重要だと思っています。
最近の市場では、中東情勢や原油価格、Fedの利上げ、AI開発の減速懸念など、いろいろなニュースが同時に出ています。
しかし投資家として今いちばん気になるのは、
「安全な米国債で5%近い利回りが得られる世界で、それでも株を高い価格で買う理由は何か」
という問題です。
Reutersによると、米10年国債利回りは5%を突破し、2007年以来の高い水準に達しました。
背景には、原油高によるインフレ懸念、Fedの追加利上げ観測、米国の財政赤字、そして大量の債券発行があります。 (Reuters)
ここまでは比較的わかりやすい話です。
ただ、今回少し面白いと思ったのは、
AIブームそのものも金利上昇の一因になっている
という点です。
AIブームには、もう一つの顔がある
これまでAI投資については、
「MicrosoftやGoogleなどがデータセンターを建設する」

「NVIDIAなどの半導体需要が増える」

「企業利益が増える」

「株価が上がる」
という流れで見ることが多かったと思います。
ところが、もう一つ別の流れがあります。
AI企業や大手テクノロジー企業が巨大な設備投資をするには、当然ながら大量のお金が必要になります。
その資金調達のための企業債発行が増えると、債券市場にはより多くの債券が供給されます。
Reutersは、記録的なAI関連投資を賄う企業の債券発行も、最近の金利上昇要因の一つになっていると指摘しています。 (Reuters)
つまり、
AI投資拡大
→ 資金需要・債券発行増加
→ 債券利回り上昇圧力
→ 株式のバリュエーションには逆風

というルートです。
これはなかなか厄介です。
AIブームがAI企業の利益を伸ばす一方で、その巨大投資が市場金利を押し上げ、AI株自身の高いPERを正当化しにくくする可能性があるからです。
5%という数字が株に効いてくる理由
株式投資では、よく
「株にはリスクがある代わりに、高いリターンが期待できる」
と言われます。
しかし安全性の高い米国債から5%程度の利回りが得られるなら、投資家は当然比較します。
「わざわざ高いPERの株を買わなくてもいいのではないか」
という選択肢が現れます。
特に影響を受けやすいのは、利益の多くを遠い将来に期待している企業です。
AI・テクノロジー株のような成長株では、
将来の利益を現在価値に割り引く金利が上昇するほど、理論的な価値は低下します。
企業業績が悪化しなくても、PERだけが下がって株価が下落することがあります。
これは重要です。
これまでは、
「AI需要が伸びるか」
を見るだけでもよかった。
これからは、
「AI需要の成長率が、5%の金利を上回るほど魅力的なのか」
まで考える必要があります。
ただ、今すぐ景気後退という話ではない
一方で、10年債利回りが5%になったからといって、すぐに景気後退になるとも思っていません。
むしろ今回の金利上昇には、
米国景気がまだ比較的強いから金利が高い
という面もあります。
8月の米CPIは前月比0.4%、前年比3.4%上昇しました。食品・エネルギーを除くコアCPIも前月比0.3%上昇しています。 (Bureau of Labor Statistics)
景気が大きく崩れていないところにインフレ圧力が残っている。
だからFedは金融引き締めを続けられる。
市場では、9月16日のFOMCで0.25%の利上げが行われる確率を9割以上織り込んでいます。 (Reuters)
つまり現在は、
景気後退だから長期金利が高いのではなく、景気がまだ耐えているから金利を高くできる
段階です。
ここは区別したほうがいいと思います。
問題は「5%が続いた場合」
本当に警戒したいのは、10年債利回りが一瞬5%を超えることではありません。
5%前後の金利が何か月も続くことです。
住宅ローン。
自動車ローン。
企業の借り換え。
設備投資。
消費者信用。
こうしたところには時間差を伴って効いてきます。
Reutersも、高い国債利回りが住宅、自動車、消費者ローン、企業の資金調達コストへ波及すると指摘しています。 (Reuters)
だから今見るべきなのは、
「5%になった」ことより、「5%でも米国経済が耐え続けられるのか」
だと思います。
今後は3つのシナリオを考えています
私が今のところ最も可能性が高いと思っているのは、景気はすぐには崩れないものの、高金利によって株式のPERが徐々に抑えられるシナリオです。
AI需要そのものが消えるわけではありません。
ただし、
「AIなら何でも高く買っていい」
という相場から、
「5%の国債より魅力的な利益成長を本当に生み出せる企業なのか」
を見る相場に変わっていく可能性があります。
次に悪いシナリオは、原油価格が100ドルを大きく超えた状態で長期化し、インフレがさらに広がるケースです。
Fedが追加利上げを続け、長期金利もさらに上昇するなら、まず株式のバリュエーションが下がり、その後に住宅・消費・企業投資へ影響が広がる可能性があります。
逆に良いシナリオは、原油価格が落ち着き、今回のインフレ上昇が一時的だったと確認されるケースです。
その場合、Fedの追加利上げ期待も弱まり、10年債利回りが再び5%を下回ってくる可能性があります。
そうなれば、株式市場への圧力もかなり軽くなります。
これから確認したいこと
9月16日のFOMCでは、0.25%利上げするかどうかだけを見るつもりはありません。
今回の会合では経済見通し(SEP)も公表されます。 (連邦準備制度)
重要なのは、
Fedが今回だけの利上げだと考えているのか、それとも追加利上げが必要だと考えているのか。
そしてFOMC後に、
10年債利回りが5%を維持するのか。
ここだと思っています。
さらに、原油価格、インフレ指標、企業のAI関連債券発行も追っていきたいです。
今の市場では、
AI、原油、Fed、国債市場がそれぞれ別々に動いているように見えます。
しかし実際には全部つながっています。
AI投資が景気を支え、景気の強さがFedに利上げ余地を与え、巨大なAI投資と政府債務が債券供給を増やし、高い金利が再びAI株のバリュエーションを圧迫する。
この循環がどこで切れるのか。
しばらくは、NVIDIAの売上だけではなく、
米10年債利回り
もAI相場を見るうえでかなり重要な数字になりそうです。